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2010年09月13日 シーンNo.5-02 行動結果リプレイ   『RAINBOW BRIDGE -決戦-』

シーン5-02「虹橋-決戦」



■■■ PTC@TRPG企画 ■■■
シーンNo.5-02 行動結果リプレイ 
『 RAINBOW BRIDGE -決戦- 』



「よっし、三番乗りぃ!!」
 誰よりも早く駆けだしたのは、タヌキ獣人の忍者、楓。
「結局、良くねー事は起きちまった……。だが、戦闘となればアタイの専門分野
だぜ!! ――忍法・分身の術ッ!!」
 楓の周囲に舞い散る、たくさんの木の葉。一陣の風が木の葉を空の彼方へと
吹き飛ばした時には――楓はなんと、6人になっていた。
 先頭に立つ楓本人と分身5名からなる一団は、揃った足並みで一直線に虹の橋
の上を突進していく。
「これはこれは、大した役者揃いアルなぁ! 我が愛しの青龍鉄爪の錆にして
くれるネ!」
 ミィニィもまた、お気に入りの青龍鉄爪を振り回しながら、臆することなく
巨人へと向かっていた。

「……よし」
 覚悟が定まったエリオットは、心配そうに彼を見つめるマリアージュに優しく
微笑んだ。
「マリアージュ……俺、ちょっと行ってくるわ」
「まったくもう……マスターはいつもそれなんだから」
頬をぷーっと膨らませて抗議するマリアージュに、エリオットは告げる。
「後方支援、頼りにしてるからよろしくな?」
――そして、彼女の"力"を封じた腕輪をそっと外した。
「うん……任せといて!」

 腕輪を外すと同時に、マリアージュは星降るような輝きに包まれた。

 幼い女の子の姿から、やや成長した少女の姿へとマリアージュは変貌し――
純白の翼がふわり、と広がった。周囲に満ち始める、膨大な魔力。一瞬、その
オーラが竜の形をとり、キラキラとつむじを描いてマリアージュを取り巻いた。
 本来の力を解放した彼女は、強力な癒しの力による援護を得意とするのだ。
 彼女の魔力に反応してか、ルーンストーンがきらきらと輝き始める。
「マスターたちの戦い……絶対勝てるよ。この石も力を貸してくれるみたいだし」
 手のひらの小さな石を、そっとなでるマリアージュ。
「勝てる、じゃなくて、絶対勝つんだよ」
 屈託無く笑うと、二人はともに駆け出した。
 かくして、エリオットとマリアージュはそれぞれの思うポジションへと赴く。
 ひとりは、最前線で戦いを終わらせるために。ひとりは、傷ついた仲間を護り
きるために。
 それぞれができることを、最大限生かすために――これまでひと時も側を離れず
にいた二人は、今この局面ではじめて別行動を採った。
 離れてなお感じる、互いへの信頼を胸に。


「何、あれ……」
 目前に迫る土人形の憲兵のあまりの大きさに、しばし呆然とするティア。
 改めてその巨大さを目の当たりにし、その非現実的な光景を眺めることしか
できない。
 そんなティアの手を、背後から降り立ったファルがそっと握った。
「……問題無い、敵なら倒す。それだけ……」
「ファル……」
 ティアもまた、ファルの手をそっと握り返す。
「……そっか、そうだね! あんなの、今までの『にんむ』に比べれば……」
 そこまで言って、ぐ、とのどが詰まる。
「あれ? 何でだろう? 涙が出てきそうになるよ」
 ティアは空いている方の手で、ぐしっ、と目をこすった。
「……?」
「ううん、何でも無い! ファル、いつも通り行くよ!!」
 不安そうに顔を覗き込むファルに、ティアは心配をかけまいと気丈に返答する。
「いくよ、ファル……!!」
 いつもの元気な声で呼びかけると、後衛に位置取り詠唱を始める。その様子を
見て、ティアもこくりとうなずく。
「…………。殲滅する」
 視線を前方にもどしたティアは、短く呟くと巨人に向かって飛び立った。


 ティアのみならず、飛行能力をもつ者たちはその能力を遺憾なく発揮し、空
からの進撃を行っていた。
「最近本気で戦えることなんてなかったからね……さて、あの可愛くないお人形
さんに、土に還ってもらうようお願いに行こうかしら。うふふっ」
 レティは剣を鞘から抜くと、にやりと笑みを浮かべて艶やかな蝙蝠羽を広げる。

「――私の鎌は、生と死を司るもの。この世界を混沌へ誘うならば、オマエには
死を授けよう……」
 翼を広げ憲兵の元へと空を切るロリーナは、その愛らしい容姿とは裏腹に
酷薄な笑みを宿していた。
 凄絶ともいうべきその表情は、俄かな命のやりとりでは到底生み出されない
迫力をもって、彼女のその恐るべき正体を匂わせていた。
 彼女の手になじんだその鎌は、いったい幾つの命を刈りとってきたのか。
 それがロリーナの口から直接語られることは恐らくないだろうが――この戦い
の中で、その片鱗をうかがい知ることはできるかもしれない。

 コルヴィーノは、戦線のやや後方上空に羽を広げて位置取っていた。戦況が
一望できるベストポジション。彼はそこで、小さな声で一人、言葉を紡ぐ。
「……無視すんなよ。聞こえてんだろ、俺の声が」
 ざわり、と眼下に広がるカオスフィールの森が揺らいだように見えた。
「アレがこの世界に降りて来たら、お前等だって困るだろ。隠れてないで出てこい
……カオスフィールのカラス共」
 ひとりごとのように低く発されたその声を合図に――森の奥から一羽、そして
また一羽とカラスがコルヴィーノの元に集まって来た。やがて森中にいたカラスが
彼の元に集い、大きな群れとなり、カアカアとけたたましく鳴きながら、うねる
ように旋回飛行をはじめる。
 コルヴィーノを中心に、殺気を宿した黒い風羽の竜巻が形成されていく。
「良い子だ。お前等、くれぐれもお嬢様方に傷がつかない様に援護しろよ。――
行け、カラス共」
 命令を聞き終わるや否や、カラスたちは空を滑るかのように、戦場の中心を
目指して向かっていった。

 tricksterは、巨人の群れを目指し駆けていく人々をひとり見遣っていた。
「まったく、面白くないなぁ。いや、そうそう滅多に見られる光景じゃない……か」
 言うなり、ふわりと浮き上がる。
「戦闘は得意じゃないからね。向こうの攻撃が当たらないよう、魔法で援護っと」
 自分の姿を霧状にし、景色に溶け込ませる。
「これでよし。さて、皆の活躍を見ながら、適当に戦いに参加してみますかね」
 彼の言う《適当》の言葉には、《適切》の意味合いが確と含まれていた。
 がむしゃらな姿は、自分に似合わない。ようはどんな状況も楽しめればいいのだ
――結果的に、世界を救うとして。
 そうやって自分のスタイルを保ちながらも、状況と役割を放棄することはしない。
そんな、非常に彼らしい戦い方であった。


 皆が、それぞれ自分の思いを胸に、戦いに身を投じていく。
 リーファはそんな彼らの姿を、ひとりひとり瞳に焼き付けていた。
「ビフロストの橋らしく、それぞれの道……というところかな?」
「そういう例え方もできると思いますが……それでも一つにまとまっていますよ。
彼らも、そして私たちの意志も」
 リーファのつぶやきに、シズナが静かに応える。
「うん、そっか、そうだね……。よおっし! 私の役目は、前線で戦いながら治療
だね! シズナは、装置解除のサポートお願いね!」
「ええ、任せてください。一刻も早く、この状況を皆で解決しましょう」
「うん!」
 力強くうなずいたリーファは、塔に残る者たちを背に、七色の橋を駆けていった。


 そんな彼らとともに、他の者も一斉に駆けだしていく。
 目指す先は、襲い来る巨人の群れ。



 * * * * *



 巨人の軍勢を足止めするべく戦う仲間の、はるか後方。
 塔の最上階に残った者たちもまた、静かな戦いにその身を投じていた。
 魔道機械を停止させる――その試みを、今まさに開始しようとしていたので
ある。

「これが魔導機械……ね。こんな機会じゃなきゃ触れることなんてないわね……」
 蔡花(さいか)はつぶやきながら、ぐるりと機械の周囲を回る。
 エディも機械を用心深く眺めながら、その胸の中で占い師の助言を思い出して
いた。
(……オラクル婆さんも言っていた。皆の言葉をよく聞くことだ、って。考えて、
言葉にすることだ。バラバラの情報を組み合わせるんだ……)
 厳しい表情で思案するエディの隣に、ぐるりと一周した蔡花(さいか)が
戻ってくる。
「電源みたいなものはあるのかしら? それを絶つ事が出来れば……」
 だが、外部から電源を供給しているような箇所は見当たらなかった。どうやら、
機械内部にその動力エネルギーを内包しているようだ。
 セシルも興味深そうに、あちこちをつついたりコンコンと叩いてみる。
「どこか適当にいじればなんとかなるかもなー」
「……セシルさん、大胆だね」
 思わずエディがセシルにツッコむ。直接触っても危険がないかどうか、慎重に
調べようとしていたところに、何のてらいもなく機体に触れたのでびっくりした
のだ。
「ま、怖がってたって仕方ないよ。こういうのは……《ゲーム》と同じだ。仮に
何かあったとして、状況はこれ以上悪くならないだろーし」
 二位三がおもむろに、ガチャガチャと機械の出っ張り部分を引っ張ったりし
始めた。
「どこかに攻略の《ヒント》はきっとある。それを探し出せれば止められるはず」
「そうだよ、きっと何とかなる! これだけの仲間が集まってるんだ、無理じゃ
ない! 頑張ってこの機械止めて――この国護れなきゃウソでしょっ!」
 ノアーレも、二位三に続いて機械を調べ始める。彼女自身もまた、その体は
機械でできていた。まるで自分のルーツを探し出すかのような心持ちで、機械の
構造を探る。
「とはいっても、危険そうな気配がしたら互いにすぐに知らせるようにしよう。
万が一誰か怪我でもしたら……ね」
 エディが皆を心配しつつ、自身も調査をはじめる。すぐ隣では、蔡花(さいか)
が自分のモバイルパソコンと魔道機械を接続していた。
「それにしても……」
 ネリネがつぶやいた。
「看板の絵が正確でなかったから、こんなになっちゃったのかぁ。ねずみの王様
って、ずっと地下に閉じ込められてて時間なんていっぱいあったんだから、もう
ちょっとお絵かきの練習すればよかったのにな」
「はは、確かに」
 思わず全員に笑いがこぼれた。その発言から、ふと、エディの脳裏に閃くもの
があった。
「そうだ……キャッスルから運んできた、このリング」
 本来なら、これも一緒にここに運ばれてくるはずだった。魔道機械が暴走して
いるのは、このパーツが足りてないからだ――と推論できる。


 そのように思っていたのは、エディだけでなかった。
 きっとこのパーツを機械に組み込む方法があるはずだ。
 そして、それこそがこの機械の暴走を止めるために必要なプロセスだ、と――
そんな直感を、この場にいる全員が感じていた。



 * * * * *


 
 迫りくる巨人の群れは、虹の橋を三分の一ほど渡ってきたあたりでその速度を
大きく落としていた。
 そこでは、先に戦いに向かっていたBBとディーンが、群れの先頭にいる巨人と
すでにその戦端を開いていたのだ。

 初撃を放ったのはディーン。
 空から巨人の頭部へ近づいていく。もちろん巨人も黙って接近を許すことはなく、
長い腕を振り回してディーンをたたき落とそうとする。
 そんな巨人の攻撃を翼を巧みに動かしてかわし、一瞬の隙をついて巨人の眼前へ
とディーンは躍り出た。
「…………ッ」
 無言のまま、ディーンは一枚の黒羽根を手に取り、ダーツの矢のように巨人の
眉間をめがけ投擲する。次の瞬間、羽がチリッと輝いたかと思うと、まばゆい
閃光を放って爆発が巻き起こった。
 顔前で爆発が起こった巨人は、思わず顔を両手で覆って立ち止まる。巨人の足元
から近づきつつチャンスをうかがっていたBBは、その隙を見逃さなかった。
「せいっ!!」
 赤い光を放つBBの剣が、大きな円弧を描いて巨人の右足に打ちおろされる。
 右足は、ちょうどくるぶしの上辺りからすっぱりと両断された。先頭の巨人が
大きくつんのめって膝をつく。
「よし……!!」
 この戦いはあくまでも時間稼ぎの足止め。移動能力を削ぐことで、効果的に時間
を稼ごうとしていたのだ。
 だが、足の切断に成功したことで油断が生まれたのか――BBは気付かなかった。
すぐ後ろに、別の巨人が迫っていたことに。
「!! ……危ない!」
 ディーンが叫ぶ。BBはその声にハッと振り返り、巨人が振りあげた拳を見上げた
まま硬直してしまった。足が、動かない。
 ディーンは咄嗟にBBの元へと急行しようとした。だが、ここからでは救助は間に
合わない――!!


「戦闘タイプ “ワンマンレスキュー” 発動――!」


 七色の橋上を、火花を散らしながら滑るように超高速で近づく、装甲機体。
 機装状態となり、ブースター全開で救助にやってきた有栖川アリスだった。
 間一髪、巨人の拳が打ちおろされる寸前で、BBを抱え滑り抜ける。直後、ドン、
と虹の橋に拳を打ちつけられた音が背後で響いた。

 アリスはBBを抱えたまま、戦線から退く形で滑走を続け、巨人との距離を広げて
いく。
 そんなふたりの頭上を、巨人たちに向け仲間からの牽制攻撃が飛んでいった。
楓が撃ち出す巨大手裏剣、ミスリルの放つキャンディ型重金属ミサイル、ロリーナ
の鎌から放たれる魔法攻撃。
 味方の援護のおかげで安全と呼べる地点までたどり着いたアリスは、緩やかに
速度を落としBBをそっと降ろした。
「間に合ってよかった……余り無理しないでね」
「あ……ありがとう……」
 冷や汗をぬぐうBB。
 ディーンもまた、BBとアリスの元に空を切って急行してきた。二人の無事を
見届け、ほっと胸を撫でおろすディーン。
「無事アルか――!!」
 後方から真っ先に駆けよってきたのはミィニィとゼイド。BBたちをかばうように
前に立ち、ミィニィは青龍鉄爪を、ゼイドは主人から託された大事な剣を構えて
追撃を警戒する。
 体制が整ったとばかりに、ミスリルが巨人たちに向かって宣戦布告を叫ぶ。
「ここからは、ぜんいんでたたかうの! いっぽたりともすすませないの!!
ぼっこぼこにしてやんよ―――――なの!!」



 * * * * *



 リーチェはただひとり、戦線に加わるでもなく、機械停止を試みるでもなく――
塔に現れた看板を調べていた。
 看板に書かれていたのは、幼い文章で書かれた謝罪文。

「地獄(ゲヘナ)の灼熱の王(イブリース)が、何をしでかすと思ったら……。こんな
可愛らしい文章じゃ、怒る気にもなれやしない」
 リーチェは思わず苦笑した。
「『ビスロストの橋』、か。神々の国に繋がる虹の橋。……地上に戻りたかったのか
なぁ?」
「――かもしれないね」
 そこへ現れたのはクロ丸。彼もまた、思うところがあって単独行動を行っていた。
「戦いも、機械停止も、頼もしい仲間が事に当たってくれてる。でも、やるべき事
は今これだけじゃない――キミもそう考えてるとみた。違うかい?」
「……ん、正解」
 リーチェは懐からルーンストーンを取り出した。《オセル》のルーンストーンで
ある。持ち主のスピリアがここへ来ることができなかったため、彼女から預かって
きたのだ。
 クロ丸もまた、懐から《ウィルド》のルーンストーンを取り出す。
 ふたつのルーンストーンが、強い共鳴光を放つ。
「このルーンストーン、これまでで合わせて10個が見つかってる。まずはそれを
一箇所に集めてみようかと思うの」
「そうだね。僕も同じことを考えていた。協力するよ」
「本当は先に“広場に埋まっている大きな動く円盤”を調べたかったのだけど、
時間がなかったのよね……」
「そこの調査が必要そうなら、またすぐ戻ればいいさ。僕たちふたりだけなら、あの
ガンシップで広場へはすぐに戻れる。まずは、皆のルーンストーンを預かって回ろう」
 リーチェとクロ丸はこくりとうなずくと、ルーンストーンを手分けして集めるべく、
持ち主の元へとそれぞれ駆けだした。




 * * * * *



 間一髪助け出されたBB、それにディーンと合流した一団。
 彼らは巨人の軍勢を前に、それぞれの能力や信条に応じて的確な役割分担による
陣形を素早く形成していった。
 戦うことが得意なものは、前衛へ。救助回復が得意なもの、また積極的に戦うこと
を好まない者たちは、後衛へ。能力が攻守バランス良い者たちやサポートを得手と
する者たちは、前後の両陣に間を埋めるように……と、有機的に動いていく。
 そのさらに後方には、知略を得意とし戦場全体を視野に収める者が2名控えている。
霧となり戦局を見守るtricksterと、上空からカラスを率いるコルヴィーノだ。

 今、彼らは“この世界を守る”というただひとつの目的の元に、心を重ね合わ
せる盟友として、互いの命を預けながら戦っていた。



 ゼイドは、最前線で巨人と戦っていた。
「あの方から頂いたこの剣で、時間を稼ごう。前衛に出てあの土人形を一体でも
多く食い止めよう」
 はるか後方、街には彼の主がいる。主を、そして街を護ることこそが、彼がいま
その身に追う使命なのだ。

 エスヴァルドは、激しい戦闘に気持ちが飲まれないように努めて冷静さを保とう
としていた。
(後ろの皆が危険に晒されないよう上手く立ちまわりつつ、前線の皆のフォロー
に回るんだ……)
 視野を狭めてはいけない。戦線を維持し、仲間の危険にいち早く体が動かせる
ように、常に周囲を広く見渡しながら剣をふるう。
 普段はその表情に少年期のあどけなさを残していた、騎士見習いエスヴァルド。
 彼は今この瞬間“男”の顔であった。弱きを護る、高潔なる“騎士”であった。
――本人は、気付かないままに。

(周囲の人の動き、相手の出方を冷静に見ろ……)
 剣を閃かせながら、マデリンもまた猛る心を静めていた。
(いかん……色々思い出す。今は目の前のことに集中するんだ。目的を見失うな)
 戦いの光景は、彼女の過去の記憶を否応にも呼び起してしまう。脳裏に浮かぶ
雑念を振り払うように、マデリンは自分に言い聞かせた。
 土人形の憲兵を見据え、戦うべき相手を再度瞳に刻み込む。フッと不敵な笑みを
浮かべたあと、マデリンはその足元へと駆け出した。
 彼女には、どうあっても成し遂げたい目的があった。
 ――こんなところで、斃れてなるものか。

「皆、強いな……」
 楓は周囲の仲間の勇壮さにゾクゾクするものを感じていた。自分が攻撃するとき
には、誰かが援護攻撃をくれる。別の誰かが攻撃するときは、楓自身もまたサポート
を重ねていく。声をかけあう、呼吸をそろえる……この、得も言われぬ一体感。
 胸中には、占い師のオラクル婆さんの助言が響いていた。――ひとりひとりの力
を、最大限に。協力こそが、真実へ至るその道筋だ、と。
「……手加減なんかしてたら皆に置いてかれちまうぜ。久しぶりに、全霊をもって
討たせてもらうぜっ!!」
 自身の能力を開放し、人とも獣ともつかない姿に変化する。分身たちもまた同様に
姿を変えていく。
 6人の楓たちは、巨大な手裏剣を手に手につかみ、前方の巨人に向けて一斉に
撃ち放った。



 * * * * *


 混乱の極みとなっている、戦闘の最前線。
 その真っ只中に、ひと際異様な一角があった。
 どこから照らされているのか――スポットライトでまばゆく輝く、ひとりの
人物の影。
 PTC界のカリスマ、高貴なる魂がそこに在った。
 ――そう、我らがニーノ王子だ!!

(王族たるもの、混乱した状況でも真っ先に前線に立つ勇気を示すのが勤めだ。
だから僕は誰よりも前に行こう。……戦えないけどな!!)
 薔薇を咥え、頭上を抱き込むように両手をやわらかく掲げ、天使の羽を周囲に
ちりばめながら――ニーノは“回転の舞い(ルビ:ピルエット)”を踊っていた。
この三国世界に住む者ならば、ニーノ王子のこの華麗な舞いをしらない者はいない。
 そう、愛用のパンストを見せつけるかのような、“最も輝かしい(グラン・ジュ・
ブリエ)”――その舞いを。
(……決して虹に乗っかりたいとか、そういうワクワクな考えではないのだ。王族の
勤めだからな、うん)
 言い訳、もとい、大義を胸に、ニーノは虹色に輝く舞台を我がものにする。
「さあ巨人の諸君!! 踊りの相手をしていただこうか……さあ、さあさあさあ!!」
びしっ!! と目の前の巨人を指差し、ステップで詰め寄るニーノ。
 巨人たちが困惑した表情を浮かべながらたじろいているように思うのは、気のせい
であろうか……。



「ここ……どこっ!!?」
 とうふは、今日もまた元気にびちびちと跳ねていた。
 ――虹の上、巨人の足元で。
 彼が今いるのは、戦闘の最前線よりさらに先。なんと巨人が行進しているエリア
のど真ん中であった。
 仲間がいるのははるか後方、彼は完全な孤立状態になっていた。どうやらまだ
誰も、とうふがこんなところで跳ねていることに全く気付いていない様子。
 レストランから命からがら逃げ出しびちびち跳ねまくっていたら、なんとご覧の
あり様である。
 必ずとんでもない場所にたどり着いてしまう、とうふ氏のこのびちびち移動。
まじぱねぇ! である。毎回危険度がアップしてるところもまじぱねぇ。
「死ぬ!! 今度こそ、死ぬ―――――!!」
 どすん、どすん、と巨大な足がとうふをかすめるように途切れなくやってくる。
 皆がいるあたりまでなんとか移動して、この危険地帯を離脱したい。だが、次々に
踏み降ろされる足を避けるのでとうふくんは精一杯。とてもじゃないが、思うような
移動などできたものではない。ひたすら必死に、びちん! びちん! と跳ねて
巨人の足をかわしていく。


 ――あっ、危ない! 今まさにとうふの真上から足が……! よし間一髪セーフ!
待て、避けた先にも後続の巨人が一歩踏み出そうとしてるぞ!! ――うおおおっ、
すげえ!! ネ申回避キタ――――――!!!!! キタ――――――!!!!!


 跳ねるとうふの周囲には、いつのまにか画面を覆うばかりのコメントの弾幕が
流れていた。
 ここだけさながら、アクションゲームの神プレイ実況動画。
 がんばれとうふ、ニ●動視聴者がキミのプレイを応援しているぞ!!



 * * * * *



 戦場の後方、虹の橋の中央を少し渡ったあたり。
 目前に広がる前衛の仲間たちの戦いをサポートするべく、救助や回復、遠距離
攻撃による援護が行われていた。

「手荒な事は好きではないのですが……」
 DEARはつぶやき、両手に握った拳銃を構えた。巨人に向かって、断続的に
射撃する。
「日常を壊そうとするのならお相手いたしましょう。さあ、貴方の罪を知りなさい!
おとなしく、元の世界に戻りなさい!!」
 荒事を嫌い平和を愛するDEARであったが、平穏を乱すものに対しては厳しく
対峙する強さももっていた。それでも、むやみな破壊をしない戦い方を選ぶあたり、
とても彼女らしい。
 彼女の使っている拳銃では、さほどのダメージも与えることはできないだろう。
だが、撃たれた巨人はうっとおしそうに手をふりまわし、行進の列が乱れる。これ
だけでも充分に、援護としてその役に立っていた。


「むうぅ。今こそ、このししまいの隠された能力を発揮すべき時だ……!」
 唐草模様の衣を風にはためかせ、虹の上を素早く駆け抜けるししまい。
 ししまいにまつわる伝承の中には、《噛まれると頭がよくなる、怪我が治る》
というものもあることをご存じだろうか。
 そう、ししまいは幸運を運ぶだけでなく、怪我を治すこともできるのだ!
 走りながらししまいは、ガツン! とひとつ大きく歯を噛み鳴らした。瞬間、
その歯先から火花が散る。いや――よく見るとそれは、小さな稲妻であった。
 ――『噛み鳴り』は『雷(かみなり)』を生み、そして『神成り』を呼び結ぶ。
 ししまいの歯に宿るのは、まさしく神通力。神の御技なのだ。

「前線で傷ついた者はいないか?」
 ひらひらりと見事なステップで戦線を練り歩きながら、負傷者を治していく
ししまい。
 あんぐりとひらいた顎は一瞬逃げたくなる怖さではあるが、カプリと噛まれると
あら不思議。傷がみるみる治っていくではないか! しかも、噛んだついでにパワー
アップのおまけまでついていた。恐るべし、ししまいに秘められた神通力!
 怪我を治してもらった者はその体に大きな歯形をつけつつ、より強化された
武器や魔法杖を手に、再度戦線に復帰していった。


 後衛陣の、さらに後方。
 大量の薬草を橋の上にひろげ、らぱん・グラスメア卿・セイリスの3人が薬草を
つぶす作業を行っていた。
「うっわあ……クサイ。本当にこれ潰すとクサイよ……」
「ね、いったでしょ。でもこうやって潰して傷口に貼ると、一瞬で傷が治っちゃう
んだよ!」
鼻をつまみ顔をしかめるグラスメア卿に、らぱんがその効能を力説する。
 草食で、おいしい草を求めて世界を周遊しているらぱん。その知識は当然、草の
薬効にまで及んでいた。
「なるほど、プンプン草ですか。確かにこれはよく効きますね」
 薬師の家系出身のセイリスも大きくうなずく。さまざまな薬の匂いに慣れている
からか、草の放つ強い刺激臭にも平気そうな表情だ。
「でも、こんなに大量によく持ってましたね」
「非常食だよっ♪」
「………………食べるのっ!?」
 仰天するグラスメア卿。卿にとっては、仮に大好物の食べ物があっても、コレが
隣においてあるだけで食欲を大いに減退させる臭いである……さらにそれを食す、
だなんて……。
 好みは本当に人それぞれだなあ……としみじみ感じるグラスメア卿だった。

 ともあれ、その薬効は確からしい。
 らぱん&グラスメア卿、愛らしい姿の獣人コンビは、この薬草を潰したものを
抱えて回復役として戦場を駆けまわることになった。
 ウサギとコグマの救命士……その姿だけでも思わず癒されてしまいそうである。
 セイリスもまた、契約している妖精たちを呼び出し、回復役にあたる。

 そうやって妖精たちと共に戦闘をサポートしつつ、セイリスは胸の内で今回の
事件を思い返していた。
「やっぱり、ネズミさんたちにも事情があったんですね。そして、身勝手な行いを
謝ってくれた。だったら……」
 手の中にあるルーンストーンを、強く握り締める。
「だったら、このネズミさんたちも、この世界も、護りきるだけです……!」



 * * * * *



 塔の真ん中あたりの階。
 最上階から避難していたネズミたちとともに、里穏(りお)はいた。
 彼女も戦いに身を投ずるつもりであったが、その前に塔の調査をすることを
思い立ったのだ。
「戦いには少し遅れるけど……ひょっとしたら、何かわかるかもしれないし」
 ちゅうちゅうと愛らしく鳴くネズミと共に、塔の内部をくまなく調べる。
 塔は、非常にシンプルな構造をしていた。10階のフロアと、それらを繋ぐ
螺旋階段。
 ただ、不思議なのはその表面の質感であった。レンガの模様も螺旋階段も
何もかも、まるでクレヨンで塗った子供の落書きのような……
「これって……どうみても、絵。だよね」



 そうつぶやいたときだった。
 彼女の元に、ひとつの光る石が現れる――

「あ……これ、皆のところにも表れた、あの石……?」
 そう、ルーンストーンであった。
 里穏(りお)が手に入れたのは――【《ペオース》のルーンストーン】。



「ついに――《ペオース》を見出したようだね」
 ふいに、背後から声をかけられた。
「誰!!?」
 驚き、振り返る里穏(りお)。彼女の背後に立っていたのは――。




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